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黒と白が織りなす色の芸術を「書道」から「アート」へと、その世界観を広げ、若手書家として第一線で活躍する田中逸齋氏。女性誌でも熱い視線をあび、多忙な日々をおくる氏のSTART LINEとは?

「まだ引っ越したばかりなんですよ」。 カジュアルスーツを涼やかに着こなして微笑む書家・田中逸齋氏。 アトリエ兼事務所の窓からは明るい陽光が差し、白い壁には氏の作品が空間美としてとけ込んでいた。

─書家になろうと思ったのはいつ頃ですか?
 左利きを矯正するために小学校2年生から書道教室に通っていましたが、中学からは一転してバスケットボールに夢中になり、インターハイまでいきました。その間「書」とは離れた生活をしていて本格的に考えだしたのは高校で進路を決める時です。当時お世話になった先生に、「お前なら書道で食べていけるぞ」、と言われて初めて書家を意識しました。

─実際に仕事に就いたのはそのあとですか?
 やはりすぐに仕事、というわけにはいきませんよ。その当時はまだ実力もありませんでしたから。 書家として活動するなら、誰が観てもいいなと感じる作品を描けるようになってからだと思っていましたね。お金をいただくのはそれからだと。

─ビリヤードの腕前はプロ級だとか。
 いえいえ、そんなことはないですよ(笑)。学生時代、確かにプロになりたいと考えたこともありましたが、手球に気持ちを伝えるまでには至らなかったのです。ビリヤードをしない方にとって、それはゲームという概念が強いのかも知れませんが、私は、四角いテーブルの中で手球を動かすアートだと思っているんです。書がアートならビリヤードもアートであると。アートとして、如何に気持ちを込められるかという点で、自分にはやはり書道が向いているのだと確信しました。

─プロとしての条件って自分なりにありますか?
 技術面のブラッシュアップは勿論ですが、とにかく「いいものを創る」ということに尽きると思います。それは昨今の風潮でもある、ただ単に面白くてセンセーショナルなものを、ということではなく、国籍問わず、誰が観ても「いいな」と感じる作品を創るということです。そういった作品からは、創り手の溢れんばかりの感動など、豊かな気持ちが伝わってきて、時代を経ても色褪せないよさが感じられますからね。これはどのようなジャンルのクリエイションにも共通することだと思っていますよ。

─プロになることに不安を感じたことは?
 最初は確かに生活するということに対しての不安はありましたよ。しかし、自分の実力に自信がついてからは、それは消え去りました。「良い芸は潰れず」という信念をもち続けてきましたしね。

─ご自分の今後の方向性などはありますか?
 書というものは、文字と線と余白の美によって感動を与えるアートだと思っていますから、それをこれからは、日本のみならず海外へも発信していきたいですね。絵画にも勝るとも劣らない芸術性の高さと、普遍的な感動が備わっていると思っていますから。

─スタシオ読者へのメッセージを最後に?
 しっかりとした技術を学ぶのは勿論、概念や先入観に捉われない自分自身の感性も磨いてくださいね!


田中さんの、これがお気に入り!

プライベートで重宝しているのが万年筆。イタリアのデルタがお気に入りです。職人が作った繊細なペン先は、書く時の角度で太さを変えることができるのが魅力的ですね。
あとはなるべく視野を広げたいので、絵画展や写真展によく行きます。自然の造形のマティスの絵は観ていてとても落ち着きます。写真家の木村尚樹さんの作品もまるで光が動いているようで面白くて大好きですね。
田中逸齋/Tanaka Issai
書家

1977年4月12日生
□全日本高校大学書道展
 大賞受賞 (二年連続受賞)
□大東文化大学 文学部
 中国文学科 卒業
□高木聖雨氏に師事
□近代書道研究所勤務を経て
 独立
□読売書法展にて特選受賞
□読売書法展にて奨励賞受賞
http://tanakaissai.com/
新作『forest in the silence』
壮大さの中にも優しさが
感じられる作品である。
『image』
『徒然なるままに…
(杜甫之詩) 』
『flight in the night』
羽田エクセルホテル東急の
ラウンジに設置。

※『』内は全て作品タイトル